WOKER’S インタビュー 中嶋材木店の中嶋さん
有限会社中嶋材木店
中嶋博幸
【WOKER’Sインタビュー】
TOKYO WOODを支えているWOKER’Sの方にインタビューを行い、普段はなかなか聞くことができない話を伺いました。
今回は、有限会社中嶋材木店の中嶋 博幸さんにインタビューをしました。
原木市場の雰囲気、どうやって丸太を選ぶのか、TOKYO WOODで天然乾燥をすることになった経緯、木の好きなところ・嫌いなところなどをお聞きしました。
▲インタビューをした中嶋材木店の中嶋さん
Q.原木市場の雰囲気について教えてください。
A.意外になごやか。市場って聞くとみなさん、築地みたいに活気があふれているイメージを持つが、原木市場はたんたんと進んでいく感じで大体同じ人が集まっているからほとんど知っている人ばっかり。
月2回あって、13時に始まって、15時半・16時には終わるよ。
▲原木市場の様子
Q.いつもどんな気持ちで行くんですか?緊張感とかあるんですか。
A.普段は緊張感はないけど、どうしても今回買わないといけないもの、これだけは確保しないといけないっていうときに、他の人も同じものを欲しがっていた時には、競り上がってしまう。山の人にとっては高く売れるからいいのだけど、これだと赤字になっちゃう、、、っていうときの緊張感はある。
▲原木市場での中嶋さん
Q.丸太を選ぶ基準について教えてください。過去のコラムによると木口を見て枝打ちがされているかを見るとありましたがそれ以外の選ぶ基準は何ですか?
A.スギなら色でみる。黒くなく、年輪のこまかさ、手入れがしてあるかどうか。
木材はギャンブルみたいなところがある。切り口と、皮が着いた周りを見ただけで購入するから、中身は挽いてみないとわからない。外面だけで買うから思っていたより良い、悪いっていうことはある。ばくちみたいで面白い。
でも、思ったより悪かったということのほうが多いかな。
▲原木市場で積み上げられてる丸太
Q.買ったものはいつ使うんですか?
A.受注生産品がメインなので市場で買う丸太は注文受けたものや、こういうのが来るだろうと見込んで買う。だから買った丸太は次の市までの2週間くらいで製材してしまい、そのあと乾燥したり加工したりするので、丸太を買ってから製品として出荷するまでには1~3カ月くらい要する。
Q.もし、買いたかったものが手に入らなかったらどうするんですか?
A.丸太市場で揃わないときは、山主に直接いって出してもらうこともある。
Q.予定外の買い物をすることはありますか?
A.いいもの安かったりすると、予定外でも買うね。でも切り旬悪い時は控える。
▲国産のスギの美しい木目
Q.TOKYO WOODの特徴の一つでもある、天然乾燥をすることになった経緯を教えてください。
A. TOKYO WOODの柱も最初は、天然乾燥ではなく高温乾燥材でやっていた。
背割りを入れずに、無背割りの状態で乾かして、なるべく表面に干割りが起こらずに中まできちんと乾かすというのが非常に難しいところで、それをやるために、高温で短時間で周りを固めてしまって乾燥させるっていう方法が今の主流なのね。
ある現場で年配のお客さんから、「ヒノキを使っているのにヒノキの香りがしない」っていう話がでた。
昔の人は木が持っている香りとかを知っているからね。香りがしない理由は、高温乾燥によって、
木が本来持つ香り、粘り気、脂気を強制的に抜いてしまっていることにあるのね。
そこで低温乾燥の案が出た。しかし、低温乾燥は、時間がかかるし、表面だけが先に乾いてしまうので、
表面が収縮してしまい割れてしまうのね。この干割れは強度上問題ないけど、お客さんから見て印象がよくないから、これはダメだってことになった。
違う方法として、一面背割り方法での低温乾燥を提案した。
この方法っていうのは、昔の家に普通に使われていて、柱の一面だけに深く背割りをいれることによって、
他の面が割れないというもの。でも今の家は、和室がほとんどなく石膏ボードで見えなくなってしまう
工法だから、そのときの湿気によって、その一面背割りの口が微妙に動くことで石膏ボードに割れが入ってしまい後でクレームになるからダメだねってなった。
そこで、4面に浅くスリットを入れて自然に低温で乾かす方法がいいのではと話がでた。
でもそれだと商売的に回転が悪くなってしまう。高温乾燥だと1週間から10日くらいで乾かせるけど、
天然乾燥だと3.4か月くらいかかるため、在庫をたくさん抱えないといいけなくなり、場所を取るし、
コストもかかるようになってしまう。
口で言うほど簡単なことではないけど、木のことを知っている人は高温乾燥より天然乾燥をした木のほうが、
木にとって絶対良いってわかっているし、それぞれの想いが一致し「それでいきましょう!」と判断し、
数棟実際に使って試してみて現在に至っている。
▲天然乾燥中の材
Q.中嶋さんは木を生業としていますが、木の好きなところ・魅力はどこですか?
A.改めて好きなところって言われてもなあ。鉄やプラスチックみたいに無機質なものより明らかに、肌触りが良いし、ぬくもりもあることかな。でも一番は、人類の長い歴史の中で木を使うことで環境にも人体にも弊害を起こしたことが一度もないってところ。例えば、木は息をして調質性能があるとか健康にいいとかいうけど調質性能だけだったら除湿器入れたほうが性能いいだろうし、健康にいい建材ってあるけど、つくるときも処分するときも環境負荷がないものって、木にかなうものないんじゃない?
▲東京の森林
Q.一方で木の嫌い・苦手なところはありますか?
A.製材所は広い場所を使う、製品化するまで時間がかかり回転が悪いなど、商売するのに結構お金がかかるところが辛いところかな。でも、日本って、緑も水も豊かなのは山あってこそで、それを活かす大事な仕事だし、それを生業にするっていうところにやりがいがある。
▲中嶋材木店の中